生前墓について

生前に建てるお墓は聖徳太子から始まりました。

よくあるご質問の一つに「生前にお墓を建てると早くあの世に連れて行かれるようで………。」というものがあります。
寿陵墓(ジュリョウボ)は縁起が悪いなどと説く有名人もいるようです。
もし、そうであるならば、なぜ生前に造るお墓を寿陵墓と縁起の良い名で呼ぶのでしょうか。なぜ、聖徳太子が率先してお造りになられたのでしょうか。

この慣習はインドに発し、多くの教典と同じように中国を経て奈良時代に日本へ入りました。仏教の伝来と期を一にしています。
寿陵墓の一番の価値は、何よりも建てる人の「心が定まる」ことです。
自分を導いて欲しいと思う信頼できるお寺を選び、気に入った場所を選び、天地の理に即していて、み仏のご加護をいただくにふさわしい形などを決め、自分のいのちの終末をしっかり見すえるわけですから、もう、あの世の安心は確保されたようなものです。

当山は、寺院は「この世の幸せとあの世の安心」を得られる場でなければならないと考えていますが、寿陵墓を建てるのは、その意味で半分を成就するようなものです。

また、もう一つの価値は、お墓はみ仏のご加護をはっきりと受ける場ですから、お墓を造りみ仏に降りていただけば、御霊も今生きている人々も子々孫々もお守りいただく一族の聖地ができるということです。お詣りをすれば、そこに先亡の方のお骨があろうとなかろうと、いつでもみ仏のご加護が受けられます。
何とすばらしいことでしょうか。

あるいは、現実的な面としては、お墓は御霊の家ですから、この世の家を建てるのと同じくあの世のための永遠の家も建ててしまえば、自分が安心なだけでなく、後に続く人たちへも大きな安心を与えることになります。
また、「あのお祖父さんのようになりたいなあ」などと思うご先祖様のおられるお墓が遠かったりした場合、寿陵墓として近くに建てたお墓に分骨してお祀りすれば、いつでもご供養し、お導きいただけます。

それに、不慮の事態になればどなたも心に大きな波が立つわけですから、そうした状況にあって限られた時間の中でバタバタとことを進めるのはいかがなものでしょうか。
建墓は、御霊だけでなく建てる人にとっても一生の一大事であり、子々孫々に関わることです。
ゆとりをもってじっくりと構想を練り上げて建てるべきではないでしょうか。

お墓は、ただただドタダタと流されず、誤った観念や怖がらせるだけのタブーに惑わされず、根本の理を考えて造っていただきたいものです。

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